2009年 12月 26日
「おばあちゃんの畑」もちつき大会(その4)〜本当は最後に言いたかったこと |
(その3)からのつづきです。
もちつき大会のトークコーナーでは、終了予定時間をオーバーしてから、
「農業では食ってけない。子どもに継がせたくない。
石油がなくなるとか言ってる場合じゃない」
という意見が、ある参加者から出されました。
うわー。これ最初に言ってほしかった~!
がっつり話し込みみんなで掘り下げたい、
大切なテーマにつながる重要な本音を、
ようやくそのタイミングでいただくことができて、
うれしいやら残念やら。
朝日新聞の記事にもあったように、
その日は結論めいたものはないままお開きとするしかなかったのですが、
うれしさと残念さを引きずりながら帰ってきた勢いで、
自分の連載コラムのネタにさせていただきました。
(規定字数1400字に収めるのがたいへんでした~(^^;)
「みんな海からやって来た」 第8回 中園 順子
合理性があっても哲学がないんじゃ先がない。事業仕分けも、農業も。
「農業では食ってけない。子どもに継がせたくない。石油がなくなるとか言ってる場合じゃない」
ある地域イベントでの中高年男性の発言。この苦さの中にこそ真実はあるのでしょうが、同時に今、ここ100年では初めての新規就農ブームを迎えていることも確かです。それは、「農業でどうやって食ってくか」について、今、確固たるビジョンを持っている人たちがいる証拠でもあります。
わたしも「農業で食っていけてる」人たちを知っています。彼らは「農協の言う回数の農薬を撒き、農協に納品するやり方ではお先真っ暗だ」と言い、独自の方法を工夫し、やりがいと誇りを感じています。
わたしたちは今、かなりとんでもない過渡期にいます。どの業界にも、ただ流されるだけの人たちと、自分の目で見、自分のアタマで考えて、この急な流れを渡り切ろうとしている人たちがいます。
テレビや偉い先生や政府の言うことを聞いていればオーケーだと思っている人たちは前者。テレビも政府も農協も、自分たちが乗っている暴走列車がどこに向かっているか残念ながらわかっておらず、長期的かつ具体的で持続可能なビジョンをもっていないことを証明できる例は枚挙にいとまがありません。
食っていけてる農家さんたちは、今の社会システムに対し、どこがどうおかしいのか建設的に批判し代案を出せる力と、いのちを大切に考える哲学的視点をもっています。また、現在=移行期であると知り、長期的な着地点を見据えつつ、目の前の濁流に足を取られることなく実際的なアイデアと実行力でうまく渡っていきます。
農協の言うことをうのみにせず、自力で消費者のニーズを知り提案型の商品やサービスを展開する。マーケティングセンスを駆使し、商品や販路を開拓する。自分でできないなら、得意な仲間に手伝ってもらう。
ピークオイル後は薄利多売型の大型農業に勝ち目はなく、高い付加価値を提供できる小規模農業でしか高い現金収入の可能性はないでしょう。
埼玉県小川町や、千葉の旧三芳村、八ヶ岳エリアなど、地域ぐるみでの有機農業や自然農へのとりくみは、今とこれからの切実な消費者ニーズ(そして地球のニーズ)に応えています。農協単位で少しずつマネするところがこれから増えてくることでしょう。ハーブや加工品は工夫次第でヒット商品を生み出すことができますし、ブランド展開やPR、流通を工夫したりタイアップすることでさまざまな差別化を図ることもできます。
たとえば、雑穀ブームの背景には健康を気にかける人々の存在がありますが、ただ雑穀を売るだけではなく、さまざまな雑穀に玄米や古代米や豆類をいろんなパターンで組み合わせて少量ずつ美しくパッケージング&ディスプレイし、「メタボ用ブレンド」「血液サラサラブレンド」「ストレス対策ブレンド」などとネーミングして売っている例。売り場は美しく華やかで遠くからでも目を引き、女性や家族連れに大人気。ただ雑穀を売るのでは、競合商品と同程度の値を付けざるを得ませんが、こうやってオリジナルのオンリーワン商品を開発することで、価格上も自由度を増していきます。
お金や際限のない欲の拡大の世界に向かうのではなく、なるべく少なく稼いで楽しく生きる。若い人たちの間に、そんな生き方を志向する力強い動きがあります。かつてのヒッピーのようではありますが、昔と違うのは挙げ句の果てにヤッピーに寝返る、というお気楽な選択肢がもはや自分たちには許されないということを彼ら自身が知っていることかもしれません。いま彼らの目に映っているのは、しあわせへの片道切符なのです。
月刊誌Actioさまより
記事転載のお許しをあらかじめいただいています。
ありがとうございます。
もちつき大会のトークコーナーでは、終了予定時間をオーバーしてから、
「農業では食ってけない。子どもに継がせたくない。
石油がなくなるとか言ってる場合じゃない」
という意見が、ある参加者から出されました。
うわー。これ最初に言ってほしかった~!
がっつり話し込みみんなで掘り下げたい、
大切なテーマにつながる重要な本音を、
ようやくそのタイミングでいただくことができて、
うれしいやら残念やら。
朝日新聞の記事にもあったように、
その日は結論めいたものはないままお開きとするしかなかったのですが、
うれしさと残念さを引きずりながら帰ってきた勢いで、
自分の連載コラムのネタにさせていただきました。
(規定字数1400字に収めるのがたいへんでした~(^^;)
「みんな海からやって来た」 第8回 中園 順子
合理性があっても哲学がないんじゃ先がない。事業仕分けも、農業も。
「農業では食ってけない。子どもに継がせたくない。石油がなくなるとか言ってる場合じゃない」
ある地域イベントでの中高年男性の発言。この苦さの中にこそ真実はあるのでしょうが、同時に今、ここ100年では初めての新規就農ブームを迎えていることも確かです。それは、「農業でどうやって食ってくか」について、今、確固たるビジョンを持っている人たちがいる証拠でもあります。
わたしも「農業で食っていけてる」人たちを知っています。彼らは「農協の言う回数の農薬を撒き、農協に納品するやり方ではお先真っ暗だ」と言い、独自の方法を工夫し、やりがいと誇りを感じています。
わたしたちは今、かなりとんでもない過渡期にいます。どの業界にも、ただ流されるだけの人たちと、自分の目で見、自分のアタマで考えて、この急な流れを渡り切ろうとしている人たちがいます。
テレビや偉い先生や政府の言うことを聞いていればオーケーだと思っている人たちは前者。テレビも政府も農協も、自分たちが乗っている暴走列車がどこに向かっているか残念ながらわかっておらず、長期的かつ具体的で持続可能なビジョンをもっていないことを証明できる例は枚挙にいとまがありません。
食っていけてる農家さんたちは、今の社会システムに対し、どこがどうおかしいのか建設的に批判し代案を出せる力と、いのちを大切に考える哲学的視点をもっています。また、現在=移行期であると知り、長期的な着地点を見据えつつ、目の前の濁流に足を取られることなく実際的なアイデアと実行力でうまく渡っていきます。
農協の言うことをうのみにせず、自力で消費者のニーズを知り提案型の商品やサービスを展開する。マーケティングセンスを駆使し、商品や販路を開拓する。自分でできないなら、得意な仲間に手伝ってもらう。
ピークオイル後は薄利多売型の大型農業に勝ち目はなく、高い付加価値を提供できる小規模農業でしか高い現金収入の可能性はないでしょう。
埼玉県小川町や、千葉の旧三芳村、八ヶ岳エリアなど、地域ぐるみでの有機農業や自然農へのとりくみは、今とこれからの切実な消費者ニーズ(そして地球のニーズ)に応えています。農協単位で少しずつマネするところがこれから増えてくることでしょう。ハーブや加工品は工夫次第でヒット商品を生み出すことができますし、ブランド展開やPR、流通を工夫したりタイアップすることでさまざまな差別化を図ることもできます。
たとえば、雑穀ブームの背景には健康を気にかける人々の存在がありますが、ただ雑穀を売るだけではなく、さまざまな雑穀に玄米や古代米や豆類をいろんなパターンで組み合わせて少量ずつ美しくパッケージング&ディスプレイし、「メタボ用ブレンド」「血液サラサラブレンド」「ストレス対策ブレンド」などとネーミングして売っている例。売り場は美しく華やかで遠くからでも目を引き、女性や家族連れに大人気。ただ雑穀を売るのでは、競合商品と同程度の値を付けざるを得ませんが、こうやってオリジナルのオンリーワン商品を開発することで、価格上も自由度を増していきます。
お金や際限のない欲の拡大の世界に向かうのではなく、なるべく少なく稼いで楽しく生きる。若い人たちの間に、そんな生き方を志向する力強い動きがあります。かつてのヒッピーのようではありますが、昔と違うのは挙げ句の果てにヤッピーに寝返る、というお気楽な選択肢がもはや自分たちには許されないということを彼ら自身が知っていることかもしれません。いま彼らの目に映っているのは、しあわせへの片道切符なのです。
月刊誌Actioさまより
記事転載のお許しをあらかじめいただいています。
ありがとうございます。
by marujunx
| 2009-12-26 23:27
| ジモトの資源を生かすヒント